大都市ソウルのまちづくりと政治  ~ 韓国スタディツアーの報告 その2 ~

昨年の10月ソウルの市長補欠選挙で、市民運動出身の人権派弁護士朴元淳氏が当選して話題になりました。新市長は、就任直後から革新的な政策を矢継ぎ早に打ち出しており、その中のひとつに、「『コミュニティ』を復元する」とありますが、これについては、「ソンミサン・マウル(前回紹介した“まち”)」のような所を15カ所つくる計画です。その施策を実行するために、ソウル市マウル支援センターがオープンする予定になっています。このセンターは、(社)マウルがソウル市から委託を受けて運営することになっており、事務局長のイ・チャンハンさんから今後のセンターの事業についてお話を伺いました。

韓国も、結婚しない若者や結婚しても子どもを持たない人たちが増え、家族中心の社会から、個人を中心とした社会に変化するとともに、個人に必要な関係を地域に求めてくるようになりました。その辺は、日本の状況と似ていると思いますが、そこで地域のコミュニティを住民主体でつくるために、ここの支援センターで様々な提案を行い、進めていく予定です。

 


2日目に訪れたチェンゴン・マウルは、低所得者が住むどやがいで、富裕層の地域である江南地域に多く見られ、高層マンションのあいまに点在しています。
ここは、政府が全国の戦争孤児や浮浪者を集め、強制的に集団で収容し、労働を強いてきました(自活勤労隊)。1998年のソウルオリンピックの時、政府は、都市の美観を損ねるという理由で、自活勤労隊が外に出ることを禁じ、オリンピック直後には、自活勤労隊を解散し、住む場所を転々と変えさせられたようです。2003年、移住してきた人は、江南区から不法占有者であるということで、住民登録を拒絶されてきました。しかし、現在は、他の低所得者層のビニールハウスやどやがいなどの住民たちとネットワークをつくりながら、ワークショップを通じて、コーポラティブハウスをつくることを目標に、貧困からの脱出を試みようとしています。私たちが訪問した時に、代表者から、人権派のソウル市長に面談し、「強制的に住民を排除しないことを約束してくれた。」と報告があり、住民たちからは拍手が湧き上がりました。

 「『地域社会』『コミュニティ』は、親しくないと孤立してしまいます・・・」
ユ・チャンボクさん(社団法人マウル代表)の言葉です。

仲間同士、違う意見を言っても反対しても、受容関係があれば真実は真実のまま伝達できるだろうと彼らは考えてきました。お互いを尊重し、納得いくまで住民同士が話合い、ソンミサン・マウルのような住民自治をつくってきたのではないでしょうか。今回のスタディツアーから学ぶものは沢山あります。