「東京の周産期医療の課題」

先日都内で、具合悪くなった出産間近かな女性が、7つの病院に受け入れを断れ、1時間15分後に病院に運ばれて出産したものの、3日後に脳内出血で亡くなるということがあった。最初に連絡したのは、都立墨東病院だったが、当直の医師が1人しかいないことから、受け入れず他の大学病院なども集中治療室がいっぱいであることから搬送を断り、もう一度都立墨東病院に受け入れを頼んだ。都立病院でこのようなことが起こるなんて。と信じられない都民も多いと思うが、都立病院の医師不足は深刻な状態になっていた。
この墨東病院は、周産期母子総合センターになっており、地域の病院からも体制整備を求める要望書がだされていた。そしてER(緊急救命)にも指定されていながら、その役割を果たしきれていない。

都内の周産期医療を取り巻く現状は、出産数は減少しても高齢出産や不妊治療などにより、低出生体重児は増加している。ハイリスクな妊娠の増加により、集中治療室(NICU)は満床の状態化している。このために、救急医療などで妊産婦や新生児の緊急困難な状況が続いている。今回でも民間の大学病院では、NICUがいっぱいで、搬送を断るケースがいくつもあった。

NICUが都内には、195床あり都立病院では45床を占めている。
都立でも同様に満床の状態が続いており、その要因のひとつに、長期入院患者の存在が指摘されている。呼吸障害などの慢性疾患に関連した医療的処置を引き続き必要とする場合が多く、地域の診療所や病院でのフォローアップ体制が求められているが、なかなか連携できないのが現実だ。

都では、周産期医療の課題を話し合うため協議会をもち、この3月に提言を出しガイドラインまで策定された。しかし、医療連携は機能しなかった。
数多くの病院がある東京で、何故このような事がおこるのか。医師不足は国の責任もある。それなら、東京都には責任はないのか。そんなことはないはずだ。
今回の事を通して、東京の周産期医療の課題をいろいろな角度で検証してみたいと思う。