「深刻化する子どもの貧困の問題」

「子どもの貧困」日本の不公平を考える・・・阿部彩さんの著書を読み、改めて考えさせられました。日本は「格差社会」であることが、多くの人に意識されるようになりましたが、大人の社会で「格差」が存在するのであれば、大人の所得に依存している子どもの間にも、当然ながら格差が生じます。
OECDの報告書によると、日本の子どもの貧困率が徐々に上昇しつつあり、2000年には14%となり、この数値がOECD諸国の平均に比べて高く、母子世帯の貧困率が突出して高いことが指摘されています。

これまで母子世帯については、公的支援策が行われてきています。児童扶養手当、母子寡婦福祉貸付金などの貸付金、保育所の優先入所やひとり親家庭ホームヘルプサービスの育児支援、母子家庭等就業支援などあり、東京都では、児童育成手当など単独で行っている制度もあります。
2002年母子政策改革では、児童扶養手当など受給期間が長期で恒常的な性格を持つ所得保障は極力制限し、代わりに職業訓練などを通して母親自身の労働力を高めることにより、将来的には政府からの援助を必要としない、「自立」にむけた生活を目指す方向をうちだしています。しかし、市区町村が窓口になって行われている「母子自立支援プログラム」や都が行っている職業訓練がほんとうに有効であるのか、その検証はされていません。

OECD諸国のひとり親世帯(どの国においてもほとんど母子世帯)の就労率と母子世帯の子どもの貧困率を比べてみると、日本のひとり親の就労率は、世界第4位なのに、貧困率はトルコと大してかわらない第2位とひどい状況。
母子世帯の当事者団NPO「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査によれば、5人に1人は複数の職を掛け持ちしており、長時間労働や複数の職の掛け持ちなどをして、生計を維持しようとしており、子どもと過ごす時間が少なく、母親自身の健康を損なったりする状況になっています。

「子どもの貧困」を書かれた阿部彩さんは、子どもに関する対策を「少子化対策」ではなく、「子ども対策」に変えていく必要があると指摘しています。
子どもの数を増やすことだけではなく、幸せな子どもの数を増やすことを目標とする政策が求められています。この点を忘れず、都議会での議論を行っていきたいと思います。